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29人のクリスマス(4)贈り物


4、贈り物


「まともな料理人を用意しない宴なんてどうかしてる。」
「私が作る?」と厨房の整頓をしながらキャサリンに聞く。
「結構ね。」
干からびた蛙を瓶に詰めなおすペタルをみて即答するのは当然だった。
「ねえ、ペタル。暖炉の方で、ムニオンを焼くだとか聞こえたけど」
厨房に戻ってきたセレスの言葉を聞き、ペタルは奇声をあげて厨房を出て行った。

「二人には手伝わせてしまってごめんなさい。本当に助かったわ。私一人じゃこの量は無理。」
セレスは厨房の大鍋を眺め、タカとコシュカの代理で厨房に駆けつけた二人に感謝した。
「ちなみにみんなお腹を空かせててひどいのよ、暖炉でバーベキューまで始まって。」
「このスープはもう飲めるはず。先に出していい。」
そう言ってエプロンを脱ぎ捨てたケストレルは、壮大なため息をついた。
「私は伝えてくる。
とある猫の娘が練り上げ、とある狐の男が味付けしたパイ。厳密に言えばオーブンから火花を散らして飛んできた黒くて粘度の高い不可食の塊の処理にひどく時間を取られたせいで」
ケストレルは床に置いていた荷物を抱えて、厨房の外へ扉を開ける。
「今、やっと、完成した。ってね。」
そう皮肉交じりになるのも理解できるほど彼女は長い時間、掃除とスープ作りに奮闘していた。

セレスは見送ったあと、大惨事を引き起こしたオーブンを見る。
そこにはいまだ、ミートパイだったモノの欠片が無残に飛び散っていた。

「残念ながら、今回の宴にジュリアの加護は受けられなかったようね。」
キャサリンがこともなげにセレスを傷つける言葉を放った。
「いいのよ、来年また挑戦する。」
セレスは一瞬視線を落として、幼い頃にした家族だけの小さな小さなホームパーティを思い出す。

「母さんみたいに作りたかった。」

なんてね。と気を取り直してスプーンを探しにかかるセレスの背中は、まだほんの子供のように小さく、儚く見えた。

—————————
そのころアーダンは、不可視のケストレルに道を阻まれていた。
「こんな日くらい迷彩するのはやめたらどうだ。なんだ、これは。」
会場に入って早々に弓使いに捕まったアーダンは質問を投げかける。何が目的なのか。
「貴方がこの包みをあの姉弟に届ければ、矢を降ろす。厨房へいって。」
そういって置かれた包みを拾い上げて覗くと、中からはいい匂いがした。
懐かしい香りだ。
「・・・毒は入ってないし、ついでにいえば爆発もしない。早く届けて。」
ケストレルに促されるままに、厨房のドアノブを回す。
厨房には一人で皿の準備をする
「プレゼントだ。」
「私に?」
包みを開けながらセレスは子供の頃のようにどきどきと鳴らしていた。
「これ、父さんから?」
「ああ。贈り物だ。」
「だが、誰からかは俺にもわからない。」
「そんな不思議なことってある?」
セレスはそっと包みを開けた。

ーーーーーーーーーーー
「アメージングな夜だ!」
目を見開いたヴォックスは、この朗報をいち早く伝えてやるんだ!と一枚の便箋を握りながら厨房へ走る。
まるで、封を切る前に聞いていた最高にノれる音楽のことなど、一瞬で吹き飛んだようだった。
「これ見ろよセレス!」
ヴォックスが厨房に入ると、セレスがミートパイを上から下から横から眺め、ミートパイへ沢山のキスを降らしている最中だった。
パイは失敗したはずじゃあ、と首を傾げるヴォックス。
「見てよヴォックス!母さんからのプレゼントだわ・・・」
「それだけじゃ終わらないんだよセレス、手紙を持ってきてやったぜ!」
母さんからだ!
二人のやりとりを眺め「なんて夜だ。」と両手を上げ降参だと言うばかりのアーダンは、気を取り直してミートパイを切り分け始めた。

「母さんの好きな星型の網目。母さんと父さんと、私と、ヴォックスで。あの時も4等分だった。」
「切りにくいったらありゃしない。」
「五角形だもんな」

————————————

仕事は終えた。
グラスと青ワインを持って厨房を出たキャサリンは壁際の椅子に腰を下ろす。
そして協力者を呼ぶ。
「フリッカー!」
「はいよ。あの姉弟の昔の記憶が観たいだなんて無茶いうもんだ。さっきあの娘に皿を届けにいったけど俺に目もくれなかったよ、まあばっちり成功だ。」
「感謝するわ。」
「それにしたってあんた、ミートパイなんて作る柄じゃないだろう。何回作ったんだか。」
「・・・あなたって、一言多い以外は良心的な妖精ね」
おっと、フリッカーは厨房から出てきた男を発見して飛び跳ねた。
アーダンが一切れのミートパイを皿に乗っけて、誰かをさがしている。
「どうするんだい。明らかにキミを探してるみたいだけど。」
妖精達に消える準備をさせてフリッカーは聞いた。
「逃げる理由はないわね。」
フリッカーがヒューっと口笛を鳴らしてにんまりと笑い、「いい休戦日を!」と唱えて消えた。
が、すぐに現れて、「旦那、喉につっかえさせるんじゃねえぜ。」とアーダンにグラスをもたせて腹を小突いていた。

「1つ余計ね。」
ケストレルを隣に手招きしながらキャサリンは微笑む。

二人の近くに腰掛けたアーダンはミートパイを口にした時に「美味いぞ。かなり。」と一言声に出した以外は無言だった。
その後、お互い目を合わせないで様子を窺っていたが、
焦れたアーダンがワインボトルをとり、グラスにまだ入っていても構わず酒を3つのグラスへ注いでいく。
「休戦日だ。礼を言う。」
注ぎ終わってすぐ、アーダンは自分のグラスを目線より上に持った。
「不思議な夜もあるものね。」
その催促を受け入れ、二人もグラスを上げる。

「全くだ。」

ガラスは触れあわされないが、密やかで確かな乾杯がそこに生まれていた。


ーーーーーーーーーー


そして遅れて、最後の一名がペタルの家の玄関前へ到着した。

「なんでこんな寒いってのに・・・早いとこ帰りたい。」
ムニオンたちが引くソリに乗せられ、小一時間は森の寒さに耐え、得体の知れないパーティ会場に連れてこられたのは一人の銃士だった。

「ようこそ!ようこそ!」
すこし顔を赤らめて、いつもより無駄に跳ねているペタルが、家の外の来客へ駆けつける。
「ねえ、着いてからずっと、狼の遠吠えが聞こえてくるんだけど、中でサーカスでも始まってる?」
「心配ないわ!フォートレスがほろ酔いなの。・・・大丈夫よ!多分!きっ!?キャーーーーーー!」
自分の家の屋根を突き破ったドラゴンが庭に舞い落ちてくる。
一連の事件にペタルの大きい瞳はさらに大きくなった。
「あらあらもうどうしちゃったのスカーファンガンドラさん!その瓶はなあに?お酒ね、インフュージョンワイン、の赤・・・。ライム!ライム!大変よ!スカーフの口から、氷が出てくるようになっちゃったのー!」
招待者のペタルが家の中へ駆けて消えていった。

やはりペタルが主催なだけある。
危険と隣り合わせのホームパーティなのは間違いないと確信した。
「逃げるが勝」
脱ぎかけたコートをもう一度着直した。が。
「・・・おかしいわね。」
グウェンは自分の格好を確認する。魔法を食らったことはすぐに分かった。
自分の私服とは掛け離れた格好に変わっていたのだ。
赤のショートパンツに赤の帽子に赤の、赤赤、とにもかくにも
「イケてないし寒い。」
「そのイケてない服で帰ろうってェ言うなら、俺は止めないね。」
いつの間にかランタンを片手にぶら下げた妖精が彼女の側にいた。
「いい趣味ね魔導師さん・・・。」
「じゃっ悪いけど今夜はとびっきり忙しい、酒だ飯だ椅子が足りないだって言うけど俺はまーだ座れてもいないってんだ!おっといけねえ、次は皿が足りないんだった。」
よく喋る妖精はそう独りごちながら姿をくらました。

嵐のように出迎えては気の向くままに消えていくペタルと、謎の妖精。
振り回され終わったグウェンはため息ついた。
その途端、今度は愛銃が宙に浮き、ひとりでに空へ向かって発砲する。
「ちょっと返しなさいよ。ていうかまだいたのね」
銃口から出る煙が妖精たちによって再構築され、
「・・・今度はなんの悪さするつもり?」
それは妖精たちの輝く粉を混ぜ込む。
そして彼女の前に、キラキラと文字を浮かび上がらせた。

[グウェンへ。いい休戦日を。]

愛銃が手元に戻されてからも、そのメッセージはしばらく輝いていた。

彼女は謎の妖精への認識を改める。
「ロマンチックな存在ね。・・・このイケてない服を着せたこと以外は。」



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Author:YURAーVG
VAINGLORYソロランクマッチの民
オータム7g→スプリング8s
→(GL加入によりこのアカウントを放置。
メインはサマー9s→オータム9sへ)
GL卒業後ブログ復活。
ちょくちょく物語を書くかもしれません。

ジャングル>ローム>レーン
ペタル狂。
目標:ソロで9g行くこと!
Twitter→https://twitter.com/000shig
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